プロローグ
フロレスタン王の宮廷では、オーロラ姫の誕生を祝う命名式が行われている。
善の精リラをはじめ、優しさの精、元気の精、鷹揚さの精、勇気の精、のんきの精という6人の妖精がやってきて、オーロラ姫に贈り物を授けていく。
突然辺りが暗くなり、悪の精カラボスが手下を引き連れてくる。カラボスは、自分が命名式に招かれなかったことに怒り、「姫が成長し16歳を迎えた誕生日に、糸紡ぎの針に指を刺されて永遠の眠りにつくだろう」と呪いをかける。
そこへリラの精が進み出て、「姫は永遠に眠るのではなく、美しい王子の接吻によって目覚めるだろう」と呪いを和らげる。国王は、国中の針の使用を禁止する。
第1幕
オーロラ姫の16歳の誕生日。
宮殿の前で、禁止されている針を使って仕事をしている娘たちが咎められる。そこへ国王の一行が通りがかる。王は、オーロラ姫に求婚に来た4人の王子を連れてきたところだった。お祝いの日に免じて、娘たちは針仕事の罪を許され、自由の身になる。
庭園では、祝宴のワルツが始まる。美しく成長したオーロラ姫が登場し、4人の王子たちは姫に踊りを申し込む。
そこへ怪しい老婆が現れ、姫に花束を贈る。花束を手に取った姫は、中に隠されていた針で指を刺して気を失う。老婆に変装していたのはカラボス。その正体を現し、高笑いしながら消えていく。
悲しむ国王たちの前に、リラの精が現れ、「姫は100年の眠りにつくだけ」と慰め、城は姫と共に深い眠りに閉ざされる。
第2幕第1場
100年の歳月が過ぎ、デジーレ王子が貴族たちと森へ狩猟に訪れる。
一人になった王子のもとにリラの精が現れ、オーロラ姫の幻影を呼び出す。王子がその美しさに魅了され近づこうとすると、幻影は消えてしまう。王子はリラの精に導かれ、小舟に乗って姫の眠る森へと向かう。
第2幕第2場
オーロラ姫の眠る城。城の周りには木が生い茂り、カラボスと手下たちが見張っていて誰も近づけない。
王子はカラボスたちを追い払い、姫の眠る部屋へと急ぐ。
眠っているオーロラ姫のもとに王子が駆け寄り口づけすると、姫は目を覚ます。王国全体も眠りから覚め、燦然とした輝きを取り戻す。
第3幕
オーロラ姫とデジーレ王子の結婚式。城の大広間で、豪華な結婚式が行われる。
ペローの童話の主人公たちによる多彩なディヴェルティスマン(余興)の数々。
最後にオーロラ姫とデジーレ王子が踊り、二人の永遠の幸福と王国の繁栄を願って、幕が下りる。
チャイコフスキーの夢見るように美しい旋律に乗せた、典雅でスケールの大きい舞台は、フランスの宮廷をモデルとしたもので、華やかなりし帝室ロシア・バレエの栄光を偲ぶのに十分である。
主役のオーロラ姫は、バレリーナにとっては非常に演じがいのある大役。お姫様らしい気品と優雅さが求められる上、第1幕から第3幕まで数多い出番を踊り抜く体力が必要とされる。
第1幕で4人の王子と踊る"ローズ・アダージオ"では、長く片足で立ったままバランスを披露する大きな見せ場がある。
第2幕では幻影となって王子を魅了する姿が見ものである。
第3幕の最後に踊られる王子との*グラン・パ・ド・ドゥは、このバレエ最大のハイライト。互いに華やかな技巧を披露し、大団円を迎える。
プロローグのリラの精を筆頭にした6人の妖精の踊りは、それぞれの性格がよく表れ、異なる雰囲気の踊りが目を楽しませてくれる。
第3幕の結婚式のお祝いのディヴェルティスマン(余興)では、金や銀の宝石の踊りをはじめ、青い鳥とフロリナ王女、シンデレラ、赤ずきん、長靴をはいた猫など、*ペローの童話の主人公たちの踊りが次々に繰り広げられ、童話の世界が華麗な舞踊シーンによってたっぷりと堪能できる。
(出典:渡辺真弓(2012)『名作バレエ50鑑賞入門』世界文化社)
*下に用語解説あり
・パ・ド・ドゥ
バレエ作品において男女2人の踊り手によって展開される踊りのこと。多くはバレエの中の最大の見せ場となっている。
・グラン・パ・ド・ドゥ
プティパが定式化した4曲構成のパ・ド・ドゥのこと。以下の順で進行することが決められている。
1.2人が入場するアントレ(Entrée)
2.男女2人で踊るアダージュ(Adage)
3.女性が1人で踊るヴァリエーション(Variation)
4.男女2人で踊るコーダ(Coda)
バレエの本領である華やかさ・優雅さを劇的に体現するもので、20世紀以降に作られたバレエ作品でもこの構成を踏襲しているものが多い。
・ペロー
フランスの詩人であるシャルル・ペローのこと。「ペロー童話集」の作者として有名。