プロローグ
騎士物語を読んだドン・キホーテは、物語の中の姫君ドルシネアを探して、お供のサンチョ・パンサを連れて旅に出る。
第1幕
町娘キトリと床屋のバジルは恋人同士。しかしキトリの父親ロレンツォは、バジルとの結婚に反対している。
何とかキトリを金持ちのガマーシュと結婚させたいロレンツォだが、キトリはガマーシュに興味がない。
闘牛士や踊り子がにぎやかに踊る町の広場に、ドン・キホーテとサンチョがやってくる。
ドン・キホーテはキトリをドルシネアと思い込み、キトリや町の娘たちと舞踏会のように踊る。
そのどさくさの中で、キトリとバジルは駆け落ちを企てる。
第2幕
キトリとバジルはジプシーの野営地にたどり着く。
ほっとするのも束の間、ロレンツォとガマーシュに加え、ドン・キホーテ一行も追いかけてきたので、ジプシーたちに助けを求める。
人形劇が始まり、キトリとバジルにそっくりの恋人たちが登場。ガマーシュによく似た悪者が邪魔に入るというお芝居である。
人形劇を見せてもらううちに、ドン・キホーテは現実との区別がつかなくなり、風車を悪者と勘違いして立ち向かっていくが、風車に引っ掛かって気を失ってしまう。
倒れたドン・キホーテは、夢の中でドルシネア姫や森の妖精たちに出会い、恍惚とした時を過ごす。
第3幕
ロレンツォは嫌がるキトリを無理矢理ガマーシュと結婚させようとするが、機転をきかせたバジルが狂言自殺を試みる。
不憫に思ったドン・キホーテがロレンツォを説得し、キトリとバジルはようやく結婚の許しをもらう。
場面は変わり、バジルとキトリの結婚式が華々しく行われる。
幸せに結ばれた二人を見守りながら、ドン・キホーテは再び新たな冒険の旅に出る。
ガラ・コンサートの定番となっている第3幕のキトリとバジルの結婚式の場で踊られる*グラン・パ・ド・ドゥが圧巻。
跳躍や回転、バランスといった超絶技巧がちりばめられ、興奮を誘う。
最大の見ものは、キトリが*コーダで披露する32回の*グラン・フェッテ。ソリストの踊りも加わって、祝祭気分を盛り上げる。
冒頭からスペイン色豊かで、キトリの登場のソロは実に躍動感あふれ、バジルとのデュエットではアクロバティックなリフトも見もの。
エスパーダと町の踊り子の踊りも情熱的で、いかにもスペインらしい。
ドン・キホーテの夢の中の森の場面は、一転してロマンティック。
森の女王の凛とした踊りに、愛らしいキューピッドの踊り、ドルシネア姫に姿を変えたキトリの優雅な踊りなど見どころにことかかない。
(出典:渡辺真弓(2012)『名作バレエ50鑑賞入門』世界文化社)
*下に用語解説あり
・グラン・パ・ド・ドゥ
プティパが定式化した4曲構成のパ・ド・ドゥのこと。以下の順で進行することが決められている。
1.2人が入場するアントレ(Entrée)
2.男女2人で踊るアダージュ(Adage)
3.女性が1人で踊るヴァリエーション(Variation)
4.男女2人で踊るコーダ(Coda)
バレエの本領である華やかさ・優雅さを劇的に体現するもので、20世紀以降に作られたバレエ作品でもこの構成を踏襲しているものが多い。
・コーダ
パ・ド・ドゥの最後に、男女が交互に難しい技術を多用した踊りを披露し、これを完結させる部分をいう。
また、作品の締めくくりに総員で踊る部分を指すこともある。
・グラン・フェッテ
片足はつま先で立ち、反対の足をムチのように蹴りだして旋回する技法。フェッテは「鞭で打つ」の意。